急募!ベリーの若様が花嫁を御所望です!
あの一族は、トップの長男…嫡男が、代々無条件で次の当主になると聞いているが…。
伝説の会長の長男夫婦は政略結婚で、元々夫婦仲が良くなく、長男には愛人と呼ばれる女性が複数おり、正妻との間には、仕方なくつくった一人しか子がおらず、自分と同じような立場の庶子が何人もいると、父や兄から聞いたことがある。
因みに伝説の会長の長男は経営には向かず、会長は長男と正妻との間の一粒種を、自分の後継にすると、かねてから公言していると聞く。
(じゃあ…その庶子のうちの誰かか…。
絶対に『あの男』ではない。ある筈がない!)
池澤は、黙って座り自分を見ている大也の端正な顔を睨みつけながら、そんな事ばかり考えていた。
コンコン…
「失礼致します」
山藤がコーヒーを二つ乗せたトレイを持って入室する。
いつもは穏やかな笑みを絶やさず接客するはずの山藤が、入室した瞬間から半眼で、池澤に対して半端ない怒りのオーラを飛ばしている。
「どうぞ」
そっけなく言う山藤の方をよく見ると、池澤に出したコーヒーの薄いこと薄いこと…ほうじ茶並みである。つまりは出涸らしなのだ。
山藤の余りにもあからさまな態度に、大也は思わず苦笑した。
(カナは亜里砂を気に入ってるからな…)
山藤は呈茶後、退室せず、トレイを胸に抱き、大也の後ろに半眼のまますっと控えた。
そんな山藤を池澤が睨む。
「秘書を外に出さないのか…」
「私の事ならどうぞお気になさらずに。池澤公平さん…」
山藤がツンと顎を上げ、無表情で答えた。
目の醒めるような美女とはいえ、半眼の見ず知らずの女にフルネームを、明らかに馬鹿にするような態度で呼ばれたことが癇に障ったのか、池澤の眉がキリキリと吊り上がる。
「ふざけるな!あんたら、いったい何なんだ!
話をする気がないなら俺は行くぞ!亜里砂をまた捕まえねばならないからな。おい!次は邪魔するなよ!」