麗しの彼は、妻に恋をする
そう言いながら不審そうに封書を翳し、レターオープナーで開けた封筒からは、一枚の印刷された紙と離婚届が入っていた。

『ごめんなさい。好きな人ができました。 柚季』

紙にはそう印字してあった。

「なんでしょう、この雑な紙」

「柚希の字が間違っているじゃん」

離婚届を手にした和葵は首を傾げた。

「こっちは間違いなく柚希の字だね」

「どうします?」

スマートホンを手に取って、一旦は指先を画面にあてた和葵だったが、気が変わったように指先を画面から離した。

「ちょっと柚希のところに行ってくる。飛ばせば一時間ちょっとで行けるだろう」

夏目は瞬時に判断した。
「いえ、車はやめましょう。ヘリの手配をします。向こうに着いてからはレンタカーで」

この状況で車で飛ばすのは危険だ。
速度違反で捕まってはかえって遅くなってしまうし、事故の恐れもある。

ベリーヒルズにはヘリポートもある。
現地のヘリポートにレンタカーを手配しておけばスムーズに移動できる。

というわけで――。

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