麗しの彼は、妻に恋をする
和葵は、田んぼの向こう側の道を逆方向に走る軽トラックを指差した。
「柚希の愛車だよ! あ! 行っちゃう」
あのボロ具合は、なるほど軽トラックのトラちゃんかと思う暇もない。
「バックして、バックバック!」
「無茶ですよ」
一台通るのがやっとという、道幅いっぱいの田舎道はUターンもできない。
ならばこのまま進んで後ろから軽トラックを追いかけるしかないが、先の交差点を右から左に進むトラクターが見えた。
目に映る農耕車優先という標識。
時速十キロくらいで走るその後ろに付いたら最後、もう追いかけるのは無理だろう。
「どうしましょう」
「くっそー」と叫ぶようにして、和葵は車から飛び出した。
「えっ? 専務?」
「柚希ー」
トラックを走って追いかけることにしたらしい。
「あぁ……」
仕方がない。
援護射撃とばかりに夏目はクラクションを鳴らし続けた。柚希が気づいてくれればいいと願って。
ブーブーブーブー。
――ん?
鳴り響くクラクションに柚希はバックミラーを見た。
「柚希の愛車だよ! あ! 行っちゃう」
あのボロ具合は、なるほど軽トラックのトラちゃんかと思う暇もない。
「バックして、バックバック!」
「無茶ですよ」
一台通るのがやっとという、道幅いっぱいの田舎道はUターンもできない。
ならばこのまま進んで後ろから軽トラックを追いかけるしかないが、先の交差点を右から左に進むトラクターが見えた。
目に映る農耕車優先という標識。
時速十キロくらいで走るその後ろに付いたら最後、もう追いかけるのは無理だろう。
「どうしましょう」
「くっそー」と叫ぶようにして、和葵は車から飛び出した。
「えっ? 専務?」
「柚希ー」
トラックを走って追いかけることにしたらしい。
「あぁ……」
仕方がない。
援護射撃とばかりに夏目はクラクションを鳴らし続けた。柚希が気づいてくれればいいと願って。
ブーブーブーブー。
――ん?
鳴り響くクラクションに柚希はバックミラーを見た。