北向き納戸 間借り猫の亡霊 Ⅱ 『溺愛プロポーズ』
 累はこわばる顔を前に向けて、帯の背をぽんと押した。
「撮ろうとは思ってたから」
 友人たちがポジションどりをしたところへ立つと、ブリーフケースと凛乃が持っていた小さなバッグを、カメラを持たないほうが引き受けて下がっていく。
「もっとくっついてー」
 ファインダーを避けるように視線を泳がせるも、周囲は人だらけだ。順番待ちなのか、こちらを注視している目もある。
 寄り添ってきた凛乃が、こっそり指先を引っぱった。
 見下ろすと、上目遣いに受け止められる。
「だいじょうぶ? ムリして笑わなくていいからね」
 労わるような笑みに、一瞬、頬がほぐれた。
「うん」
 意を決して、カメラのレンズを見据える。
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