北向き納戸 間借り猫の亡霊 Ⅱ 『溺愛プロポーズ』
「うん」
「お願いします」
 累のささやかな依頼は、ポーターが時刻を読み上げる声にかき消された。
「ねぇ、東屋はもうよくない?」
「だね。これを超えるのを撮るのはむずかしそう」
 ブリーフケースとバッグを戻してもらい、横並びになって、せっかく下りてきた階段を上る。上りもまた凛乃の手を引くと、友人コンビも凛乃の向こう側で歩調を合わせた。
「着物ってやっぱ絵になるよねー。いいわー」
「須藤ちゃんも白無垢で別撮りしたんでしょ。まだ見てないけど」
「維盛のはレンタル?」
「累さんに借りたの。お母さんの着物」
「え、それって!」
 階段を上りきったコンビの足が、相次いで止まる。
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