北向き納戸 間借り猫の亡霊 Ⅱ 『溺愛プロポーズ』
「雷を見るのが好き。猫派。甘党。香草はきらい。酒は弱い。トマトは食べるのにケチャップは買わない。枝豆にハマってた」
「食べ物から離れよう?」
「生活が規則正しい。工務店で働きながら、建築の勉強してる」
「そんな立派な感じじゃないです。リフォームで失敗したくなくて調べてるだけで」
「スーツフェチ」
「あ、え、うーん」
 凛乃がごまかそうとしたし、累も次のカードが出なくて、見つめ合ってしまった。
 さっそく言葉が尽きてしまったのは、あるジャンルを意識的に避けているからだ。
 寒くなってきてからは丸くなって寝るとか、とても肌触りがいいとか、お互い黙っているとしても手の届くところにいるとか、抱きしめたときにすっぽり腕のなかに収まるサイズ感がいいとか、照れ屋で甘え下手だけど甘えるときは思い切りがいいとか。
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