北向き納戸 間借り猫の亡霊 Ⅱ 『溺愛プロポーズ』
 踏み込んだ累の提案に、母親がちらりと自分の夫を見る。
「パートナーさんは日本のかた?」
 父親の問いに累が「ギリシャ系フランス人です」と答えると、いよいよ母親の威勢がしぼむのがわかった。
 いままで遭遇したことのないキャラクターへのイメージだけで、委縮している。
「ただ、彼がまだ大学生なので、3人で来てもらうとなると夏休みの7月か8月に限られてしまうのですが」
「こっちはかまわない。私らも休めるし、観光がてら、来てもらえばいいよ。なんもないとこだけど」
「ありがとうございます」
 わずかながら、累の口元に笑みが浮かぶ。
 それを見て、凛乃もやっと肩の力が抜けた。話の前提が、累を受け容れたところに変わった。もう前進するだけだ。
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