北向き納戸 間借り猫の亡霊 Ⅱ 『溺愛プロポーズ』
「いや、やっぱりあんたムリじゃない? つりあわないよ」
 母親の声が、まとまりかけていた流れをぶった切った。
「は? なにが?」
「こんな田舎のふつうの家の子が、うまくやってけるわけない。苦労するだけ」
 こじつけでしかない否定の言葉に、凛乃はがっくりと口角を下げた。
「そんなの、心配するフリしてさ、苦労して泣きついてくればいいのにって呪ってるだけだよ」
「あームリムリ! ムリなの」
 大声をかぶせて反論をねじ伏せようとする母親にもう一言、と凛乃が座卓に手をついたとき、
「はーい、お持たせでーす」
 襖をスパーンと開け放して、姉が絶妙な茶々を入れた。
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