北向き納戸 間借り猫の亡霊 Ⅱ 『溺愛プロポーズ』
「もうこれでいい。いいってことにしよ」
 敗北感を背負いながら凛乃は投げやりに決めつけて、軽自動車のドアを開けた。
「っていうか累さん、温泉行く?」
「……いや、もう」
「だよね。わたしもいっしょに帰りたい」
「あんたは明日帰るんだっけ」
 姉がルーフに手を載せてふりむいた。
「うん。チケット取った」
「小野里さんはこれから取るんだよね? 一泊してけばいっしょに帰れるやん」
 軽く言われたけれど、凛乃は累に先んじて首を振る。
「でも、猫がいるから」
「えーいいなあ猫飼ってるんだ?」
「ちょっと待ってあんたたち!」
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