北向き納戸 間借り猫の亡霊 Ⅱ 『溺愛プロポーズ』
「それも写真に撮りたいって」
 さすがに凛乃も単語が聞き取れた問いに、累が思案顔になる。代わって凛乃が、女将に確認した。
「うーん、いまはあれやろ? 個人情報? お客さんひとりひとりに許可取るんはムリやない?」
 それを伝えると「体験してみたい」と返ってきた。
「じゃあ夜までどこかで時間つぶしてまた来ればいいやん」
 相談を始めた凛乃たちをよそに、母親が思い出したように問いかける。
「ところでどちらにお泊りなん?」
「……決まってないそうです。ここには泊まれないのか? と聞いてます」
 すぐに累が取り次いで返事をすると、女将がかぶりを振った。
「今夜はムリなんよ」
「でも女将、あっちこっちお振舞いやし、よそは空いてないかもよ」
 累が訳すそばから、母親は「わざわざ外国からいらして、野宿はかわいそうよ」と追い打ちをかけた。
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