北向き納戸 間借り猫の亡霊 Ⅱ 『溺愛プロポーズ』
 凛乃はちょっと考えて、人差し指をくるくる回した。
「あれだよ、野良猫を餌付けするときってさ、餌で釣ったあとでも、触ろうとすると逃げるじゃない。だから気にしてません、って素振りで構わないでいたほうが安心して懐くようになるって」
 加乃子はふうっと息を吐いて、労わるような視線をよこした。
「聞くだに当時は自分を野良猫に例えるような状態だったとは思うけど。だったら相談してくれたらよかったのに。うまくいったからよかったけどさ、辞めてからの行動が危なっかしいわ」
「ごめんね」
 謝っているのに、なぜかうれしい。凛乃は口角を上げて声に力を込めた。
「だけど思い切って住み込んでよかったと思ってるよ」
 そんな凛乃を、加乃子がじっと見つめた。
「凛ちゃん、本気で笑えてる」
「え」
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