北向き納戸 間借り猫の亡霊 Ⅱ 『溺愛プロポーズ』
「話は進んでるんだけど、ことばはね。取りようによっては、まんまプロポーズなことは何度も言ってもらってるんだけど。ちゃんとしたプロポーズするって予告されてるからさ、話の流れの中でさらっとそれっぽいこと言われたのは、ちがうのかな? って」
「ちゃんとしたのって、どんなのよ」
「わかんないけど。なきゃいけないってものでもないかとは思うし」
「でも不満が残るから待ってるんでしょ」
 痛いところを突かれて、凛乃は素直にうなずいた。
「最初からいっしょに住んでて、いまは生活費も家事も折半で、結婚しても変わらないな、って、よろこぶタイミングを逃しちゃったような気がして」
 加乃子が吹きだした。「それはもったいないね」
 凛乃はレモネードのグラスを、ぐるりと回転させた。クラッシュアイスが揺れてぶつかる音に、ひらめきが誘われる。
「いやもう、わたしから言おう」
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