北向き納戸 間借り猫の亡霊 Ⅱ 『溺愛プロポーズ』
マットブラウンのストレートロングの女性が、いつのまにか真後ろにいた。
おく、さま?
聞きなれない呼び名で呼ばれたのが自分だと自覚する前に、累が「ソウデス」と答えた。
その声の冷たさに横顔を見上げる。
単なる人見知り以上の硬い鉄面皮がそこにあった。
「先ほどお話を伺ったばかりで~。あ、私、何度もお仕事ごいっしょさせていただいていて」
「出版社のひと」
短く説明を加えると、累はさっさとブリーフケースをつかんだ。
「あ、お世話になっております」
急展開についていけず、とっさに流れに沿ったテンプレ挨拶を返した凛乃へ、
「どうですか奥様、社にいらしてお茶でも」
「用事がありますので」
累がさえぎる。
おく、さま?
聞きなれない呼び名で呼ばれたのが自分だと自覚する前に、累が「ソウデス」と答えた。
その声の冷たさに横顔を見上げる。
単なる人見知り以上の硬い鉄面皮がそこにあった。
「先ほどお話を伺ったばかりで~。あ、私、何度もお仕事ごいっしょさせていただいていて」
「出版社のひと」
短く説明を加えると、累はさっさとブリーフケースをつかんだ。
「あ、お世話になっております」
急展開についていけず、とっさに流れに沿ったテンプレ挨拶を返した凛乃へ、
「どうですか奥様、社にいらしてお茶でも」
「用事がありますので」
累がさえぎる。