北向き納戸 間借り猫の亡霊 Ⅱ 『溺愛プロポーズ』
 店の奥まで入ったとき、喜ぶか驚くかという累の二択予想は微妙に裏切られた。
 ショーケースのあちらこちらから反射する煌びやかな光、それをのぞきこむ多数のカップル。
 それを見て絶句した凛乃の頬に笑みが浮かびはじめたのは、数秒遅れてからだった。
 不安になって、目を覗き込む。
「ここじゃないほうがいい?」
「ううん。近道するだけだと思ってたからビックリしただけ」
 たしかに、いつもならそうしていただろう。決意がなかったら近づく気にもなれない人混みと店構えだ。
 それでも大きなデパートにやってきたのは、ジュエリーショップをいくつか回ればなにか見つかるだろうという希望的観測にすがったからだ。
「見てみる?」
「うん」
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