北向き納戸 間借り猫の亡霊 Ⅱ 『溺愛プロポーズ』
「累さんのことを好きなひとって、タイプ似てるのかな」
「じゃあ凛乃もああいう感じってことだけど」
「あっ」
 凛乃はいたずらっぽく目をきょろりとさせて、寿司桶を玄関先に出しに行ってしまった。
 累はしかたなく、いつのまにか“お父さん”呼びしている佐佑のとなりに、どっかと座り込んだ。
「それじゃ、わたしはお先に失礼します」
 しばらくしてリビングに顔を出した凛乃は、大きなバッグを抱えていた。
「はーい、いってらっしゃーい」
 言造が手を振ると、佐佑が「えっ」と声を上げる。
「維盛さんどこいくの」
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