北向き納戸 間借り猫の亡霊 Ⅱ 『溺愛プロポーズ』
「そうか。じゃあ先に言っておく」
 いきなりびしっと指差されて、累はたじろいだ。
「大事に思ってくれてるのはわかった。だがな、白百合はおれのオンナだ!」
 唖然とする累に、言造が勝ち誇ってみせる。
「やーい、言ってやったぜ! やっとな! おまえが結婚するまで言うまいと思ってたんだが、やっと言えたぜ」
 座ったまま小躍りされて、遅れて軽い怒りを覚える。くるりと向けた背中に、一転して染み入るように深い声がかかった。
「これからは自分の奥さんを大事にするんだぞ。おまえのいちばんの家族だからな」
 かすかな寂しさのようなものがよぎって、累はふりむくことができなかった。
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