北向き納戸 間借り猫の亡霊 Ⅱ 『溺愛プロポーズ』
 累の提案を受け、式場スタッフの笑みが困惑で綻びかける。
「ムリでしょうか?」
「前例がなくて……。でもチーフに訊いてみますね」
 こちらに背を向けてインカムで連絡を取り合った式場スタッフが、ふりかえりざま、うなずいて見せる。
「よっし! あとはどう入るかだな」
 ガッツポーズした言造はノリノリだ。
「いっそ、肩組むか」
「それはヘンだよ」
 でも、ただ並んで歩くのは奇異さに拍車をかける。疑問で列席者を戸惑わせることだろう。
「あ、婚姻届け、持つのは? 喫茶店のメニュー表みたいなやつに挟んである」
「いいね、手ぶらであとをついていくだけよりは、よほど意味ありげかな」
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