北向き納戸 間借り猫の亡霊 Ⅱ 『溺愛プロポーズ』
 いままではいくら凛乃がつるにこをかわいがっても、ふたりいれば寄ってくるのは累のところだった。
 それが、コーヒーゼリーを持って戻ったとき、ちらりと目を開けて累を見ただけで、凛乃のもとから動かなかった。
 めずらしいと驚いた。でも、ようやく甘えるようになったのなら、ついに報われたな、と思う。
 式の日、お色直しの中座を埋めたのは、つるにこの成長をただひたすらに追う動画だった。
 ふたりで提供し合った写真と動画の数々を組み合わせ、控えめなBGMと短いキャプションだけでうまくまとめた、凛乃渾身の力作だ。
 これぞという写真や動画はそれまでも見せあっていたけれど、累より圧倒的につるにこと過ごす時間が少ない凛乃が、大量にデータを隠し持っていた。
 そのほとんどにいっしょに写りこんでいて申し訳ないとも思ったけれど、あくまでつるにこがメインのムービーだから、累は顔出しゼロだった。
 だからいまでも時おり、安心して見返すことができる。
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