北向き納戸 間借り猫の亡霊 Ⅱ 『溺愛プロポーズ』
「風呂。まだボロボロだから会えないって」
「そっか。ゆっくりしてって伝えて。労わってあげなよ」
 おとなしくうなずいておいたけれど、授乳以外は、ほぼ累がやっている。つるにこの産後と同じだ。
「お、寝ていくのかなぁ」
 言いながら、言造が向こうの画面を人差し指でつついた。視線の先には、彪吾のふくふくとした頬があった。
「静かだなあ。ぜんぜん泣かないな」
「さっきたっぷり飲んだばっかりだし、生後1週間ならこんなものじゃない?」
「そうだったかなあ。おまえはしょっちゅう、ぎゃーぎゃー泣いてた記憶があるよ。あんなに大きな声が出てたのに、ずいぶんおとなしく育ったなあと思ってたんだ」
「お父さんにおしゃべりを吸い取られたのねって、母さん言ってたじゃん」
「そうだっけぇ」
< 294 / 317 >

この作品をシェア

pagetop