北向き納戸 間借り猫の亡霊 Ⅱ 『溺愛プロポーズ』
   ◆
「もう寝たよ」
 夫婦の寝室に、凛乃が入ってくる。北向きの納戸を改装したこの部屋は、ダブルベッドしか置いてないシンプルな空間だ。
 寝そべってスマートフォンを見ていた累は、横へいざって凛乃を迎え入れた。
「さすがに寝つくの早かったね」
「ぺしゃぺしゃしゃべくってたのに、急に電池切れたみたいになって、おもしろかった」
 彪吾は隣接する部屋の中央に拡げられた布団のど真ん中に、大の字で寝ている。
 ふだんは凛乃も寝かしつけの流れのままそこで眠るけど、今夜はベッドの縁に腰かけて、累の脚に手を伸ばした。
「運転おつかれさま。マッサージしようか?」
「ん。腰がいいな」
 うつぶせになると、凛乃は累にまたがって、腰にゆっくり力をかけてきた。
< 309 / 317 >

この作品をシェア

pagetop