北向き納戸 間借り猫の亡霊 Ⅱ 『溺愛プロポーズ』
 ゴムをメイクポーチにねじ込み戻すころには、少しだけひんやりしていた肌が、湿度を伴って熱を上げてくる。
 累は思い切って起き上がって、カーテンに手を伸ばし、静かに引いた。目をこらせば彪吾のシルエットが確認できるとはいえ、これでこの空間はふたりだけの密室になる。
 膝立ちの累のTシャツの裾へ、凛乃の手がもぐりこんできた。
「ふたりになったら、部屋どうしようね。同室は必須なんだけど」
 Tシャツを脱がす手の動きはなまめかしいのに、凛乃の口から語られるのは、この家をどう順応させるかという好奇心だ。
「どっちの部屋を空けるかだよ。仕事部屋を動かすのがたいへんなら、こっちがこども部屋」
「おれはここで寝たい」
 すかさず累が断言すると、凛乃は脱がせた累のTシャツで口を隠して、目で笑った。「わたしも」
 累はハーフパンツのリボン結びを自らさっとほどき、下げるのは凛乃の主導に任せた。
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