北向き納戸 間借り猫の亡霊 Ⅱ 『溺愛プロポーズ』
 勝手に凛乃に誕生日を教えたのは気に入らないけど、毎年何らかのアクションを仕掛けてきていたのを今年は黒子に徹したことは、評価してやる。
 ひんやりしているのに胸があったかい、このパフェに免じて。
「累さん」
「ん?」
「プレゼントを考えてたんですけど、降参です。訊いちゃいます。なにがいいですか」
「なにもいらない」
「そう言われる可能性は高いなって思ってましたけど」
「ふーってやったから、もう充分」
「なにかひとつ、物じゃなくても、なにかしてほしいこととか」
 スプーンを置き、累はソファの背もたれに頭を載せて考えた。
 いつのまにか、つるにこがキャットタワーの上で、香箱座りで目を閉じているのが見える。
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