北向き納戸 間借り猫の亡霊 Ⅱ 『溺愛プロポーズ』
 想定外だったのか累は目をみはったけれど、手は離さなかった。
 累がシャワー直後の半裸だったときはおふざけモードだったのに、立場を交換するとふざけかたがわからない。
「着替え、ます、から」
 凛乃は胸を押さえ、累の手を振り切って階段を駆け上がる。累がゆっくりそのあとをついてきた。
 透けてるの見えちゃう!
 階段の途中で反転する。
「なんでついてくるんですか」
「凛乃だってついてきた」
「あれは、ちがう、あやまろうと思って追いかけただけです。勝手に見といて言いがかりつけたから」
「じゃあおれもあやまる」
 追いつかれて追い立てられて、凛乃は自分の部屋のドアを開けた。
 まうしろの累が勝手知ったる手つきで照明のスイッチを押す。
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