北向き納戸 間借り猫の亡霊 Ⅱ 『溺愛プロポーズ』
「点けちゃダメ!」
 明るいところでの鑑賞には堪えませんので!
 凛乃はかぶせるようにスイッチを突いた。
 一瞬明るくなろうとした照明が、とまどったようにチカチカしてやめた。
 残照の中に、きょとん、とした累の顔を見出して、凛乃は慌てた。
 もしかして累さん、単純に他意もなく無意識に点けただけ?
 なのに、肌もあらわな女が恋する相手と二人きり、真っ暗な部屋を所望してしまった。
「ちがっ、そういう意味じゃなくてっ、っ」
 またスイッチに伸ばそうとした手を上から押さえて、累がつぶやいた。
「そういう意味でいいのに」
「えっ」
 見えるようで見えない暗がりで抱きすくめられた。
 背中に回された手が、肌に吸いつくようにくっつく。
 何度も抱きしめられたけれど、そこに触れられたのは初めてだ。布という最後の一線で覆われていたから。
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