独占欲に目覚めた御曹司は年下彼女に溢れる執愛を注ぎ込む
スマホを取り出す須和は楽しげだ。葵も思わず笑ってしまう。

「ふふっ……私たち、こんなに会ってるのに連絡先を知らなかったんですよね」

「そうそう。一応、常連客として線引きをしてたからね。
聞こうかと思ったこともあったけど、その時点で何か関係が変わっちゃいそうだって思ったから」

「そうですよね、分かります」

須和は初め、葵を見守ることに徹していた。それは葵の母、由紀子との約束があったからだろう。
結局、葵が須和に思いを告げ、関係が揺れ動くことになったわけだけど……今となれば、必要なことだったのかもしれない。

「これでいつでも須和さんに連絡できるんですね」

スマホに表示された須和の電話番号に、葵は笑みをこぼした。

「うん。スマホは仕事でもマメに見てるから、いつでも連絡して。僕もするから」

「はい……」

ただ自由に連絡を取り合うことだけというのに、葵は嬉しくてたまらない。
口角が緩んだまま、優しく目を細める須和を見つめた。

「今日はお店に来てくれるなんて夢にも思わなくて……本当に本当に嬉しかったです。
明日、会えるのを楽しみにしてますね、須和さん」

「うん……僕も」

須和は再び葵の頬に手を伸ばしかけたが、我に返ってそっとひっこめた。

「じゃあ、また明日。あとで時間は連絡するね」

「はい!」
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