独占欲に目覚めた御曹司は年下彼女に溢れる執愛を注ぎ込む
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一方須和は、『須和第一不動産』会長であり、父親である義則と会食を終え、車で会社に戻っていた。


「そういえば、柾」

静まり返った車内で切り出したのは義則だった。
須和はチラリと隣にいる男に視線を送った。

「風の噂で聞いたんだが、利光の店が潰れてしまったようだね」

「ああ、そうだよ、年末におじさんが身体を壊して……」

義則と利光は幼いころからの友人だ。義則を通じて、須和は天馬家と仲良くなった経緯がある。

「やはりそうだったのか。うちの病院に利光が入院してるらしいことを聞いて驚いたんだが、
もしかしてお前の力が働いてるんじゃないんだろうな」

「……」

利光が入院している総合病院は、高所得者向けの病院で名医も多く抱え込んでいることから、簡単に入院できる病院ではない。天馬家がなぜそこに入院してるのか不信に思ったらしい。

「だとしたら何。おじさんは僕の大切な人だ。困っていたら普通に手を差し伸べるよ」

「……それはいいんだが、娘の葵ちゃんをどうこうするとかは考えていないだろうな」

義則の自分勝手な言い分をこれから聞かなくちゃならないと思うと、須和は心底うんざりした。

「もちろん葵ちゃんも助けるつもりでいるよ、彼女は僕の恋人だから」

「恋人……?」

「真剣に将来のことも考えてる」

その言葉に義則は大きなため息をついて、苛立ちのままに独り言を言う。

「……あれだけ釘を刺しといたのに、どうしてこんなことになるんだ」

「釘を刺す? それはどういう意味だよ」

須和はその妙な独り言を聞き逃さなかった。何か嫌な予感がするからだ。

「別になんでもない。羽柴の家にはどう説明するんだ。取り返しのつかないことになったら」

「梨々香にもちゃんと説明する。子供じゃあるまいし、いい加減理解してもらわないと。
それに、昔みたいに一方的にわがままを押しつけられる状況ではないだろ。
うちだってあちらの会社の裏事情はよく分かってることだし」

羽柴コーポレーションの多額の負債、横領、娘の裏口入社。
いつだってマスコミに垂れ流すことができる。

「だとしてもなんであんな子を。ただの子供じゃないか。何もないただの……」

「葵のことをこれ以上悪く言うと、あんたのことを殺しかねないから黙ってくれる」

「……」

義則はあまり須和に強く言えない事情があった。
自身が手当たり次第に不倫を繰り返し、離婚しかけた妻の間にいた有能な一人息子が須和だ。
なんとか彼を手元に置くことに成功したが、その関係はとてももろい。

「葵はいい子だよ、それにちゃんと職人としても自立しているし」

「……」

義則は何も言わなかった。ただひたすら貧乏ゆすりをしているだけだ。

(釘を刺すってどういうことだ? またこいつ、裏でこそこそ動いていたんじゃ……)

須和はにわかに浮かんだ不安を秘め、葵が今どう過ごしているだろうと思ったのだった。
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