独占欲に目覚めた御曹司は年下彼女に溢れる執愛を注ぎ込む
日にちは三月二十九日、葵の誕生日の翌日だ。

(だからあの時……)

この前電話した際に、葵から『今年の誕生日は仕事がどうしても抜けられない』と聞いていた。

また日を改めて祝うことになったのだが、茶会に顔を出しがてら葵の誕生日を祝うのが一番いいのではないかと須和は思う。

それに、葵がシンガポールで頑張った三年でもある。



「ニッキー、分かった。その日なんとか予定を開けて行く。あと、このことは葵には秘密にしといて」

『あははっ、サプライズってやつかい? 楽しみにしてるぞ、柾!』

「ああ」

葵も今年で二十五になる。
彼女はまだ若く、夢の道半ばだ。それに、魅力的な男性と接触する機会も今後もっと増えていくことだろう……。

けれど須和はそれを含めても、我慢の限界だった。

(ごめんね、葵。それでも僕は君を離してあげることはできない。
君以外を愛すことなんて、不可能なんだ)

彼は決意していた。
この誕生日に葵に結婚を申し込み、日本に戻って来てもらうことを。
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