独占欲に目覚めた御曹司は年下彼女に溢れる執愛を注ぎ込む
須和は話していたヨーロッパ人に、一度断りを入れすぐさま葵の元へと駆け寄った。

「葵」

「えっ、柾さん!?」

須和が二人の前に立ち、極力いつもの様に微笑むと葵は心底驚いた。

「お知り合い?」

アラブ人はニヒルな笑みを浮かべ、葵に問う。

「はい、こちらの方は……」

「葵のフィアンセの須和です。どうぞよろしく」

須和はニッコリと営業スマイルを貼り付け、アラブ人に手を差し出した。
もちろん同時に葵の腰を抱いたのは言うまでもない。

「柾さん?」

「へー、葵はフィアンセがいたんだね。ハンサムな男じゃないか」

アラブ人はグッと強く須和の手を握ると「じゃ、葵またね」と言ってその場を去った。

「……」

(気やすく葵なんて呼びやがって……)

「あの、柾さん……」

葵の声にハッとした須和は慌てて横を見た。

「ごめん葵、びっくりさせて」

「い、いえ。今日来てたんだね」

葵は顔を真っ赤に染め、涙目で須和の顔を見つめている。

(葵?)

「ええっ、葵の恋人はニッキーさんのお知り合いだったの!?」

「ひゃ~~なんで黙ってたのよ~~!!」

後ろで様子を見ていた外国人従業員たちが皆、どよめいている。

「えへへ、実は。いずれみんなに紹介したいって思ってたんだけど」


葵と須和が寄り添って葵の店で働く従業員と話していると、
次第に須和の知り合いの要人たちも二人を囲み始めた。

「柾も白々しいなぁ、こんな可愛い彼女がいるなんて聞いてないぞ」

「まさか和菓子職人となぁ」

葵は照れ笑いを浮かべながら、受け答えしている。
須和もそんな彼女の姿を嬉しく思った。


(あとでちゃんと葵に言おう)
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