独占欲に目覚めた御曹司は年下彼女に溢れる執愛を注ぎ込む
葵はとっさにそのはがきを別の場所に放り投げる。

「なんなのよ、私の知らないところで……」

(お父さんも、お母さんも! 須和さん、須和さんって……)

このはがきをそのまま須和が受け取ったらどんなことになっていただろう。
また、私のことを心配して会いに来たのだろうか。

「……多分、来てくれたんだろうな」

須和さんはとても優しい。自分のことを優しくないと言っていたけど、
いつも辛い時にいてくれたのは、須和さんだったから。

「……」

(このはがきは送れないけど、ちゃんと須和さんに閉店の挨拶はしておかなくちゃ)

葵は掃除を中断し、ディスクから便箋を取り出した。
ただただ、はがきに記されたテンプレートの文言を、手書きで丁寧に書き写していく。

(本当に、こんな呆気なくていいのかな)

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