エリート脳外科医の溢れる愛妻渇望~独占欲全開で娶られました~
 その顔を覗き込めば、普段は無表情でどちらかというと他人にこわい印象を与えてしまう貴利くんだけど、無防備な寝顔のせいかいつもよりもだいぶ幼く見える。

 可愛いとすら思えてしまい、気が付くと貴利くんの寝顔を微笑ましく見つめている自分がいて、慌てて視線をそらした。

 電車の中で、私の肩に頭を預けてもたれかかるように貴利くんが眠っているこの体勢も本当は少し恥ずかしい。でも、気持ち良さそうに聞こえてくる寝息に起こすのはかわいそうだと思い、そのまま寝かせてあげることにした。

 しばらくすると目的の駅まであと一駅になったので、私は言われた通り貴利くんを起こす。


「おーい。そろそろ着くよ」


 何回か肩を揺すりながら、なるべく優しく起こしてあげると、貴利くんは私の肩に乗せている頭を勢いよく持ち上げた。そして、その目が大きく見開くと驚いたように声を上げる。


「どうした。急変か」


 ……急変? 

 何を言っているんだろう。もしかして寝ぼけているのだろうか。

 寝起きの貴利くんは電車内で突然そう叫び、周囲をきょろきょろと見回している。その視線がすぐ隣にいる私を見つけると、小さく息を吐き出した。

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