エリート脳外科医の溢れる愛妻渇望~独占欲全開で娶られました~

「いや、大したことじゃないんだが。肉を食べているとたまにふと、初めてメスを握ったときのことを思い出す。人の肉は俺が想像していたよりも硬いのだと驚いた」


 ……は?

 この人は突然何を言い出すのだろう。

 想像したらゾゾゾと一気に鳥肌が立った。ローストビーフを食べようとしていた手がぴたりと止まってしまう。

 お願いだから、そういう話は食事中にやめてほしい。

 どうやら隣の席のカップルにも貴利くんの先ほどの悪気のない呟きが聞こえてしまったようで、ふたりとも「え……」という微妙な表情で固まっている。


「そうだな。硬さを動物の肉で表現すると――」

「それ以上はストップ!」


 もうお口を閉じて何も言うな!

 放っておくとさらにリアルに話しだしそうだったので強制的に終了させた。

 このままでは聞きたくもない会話を聞かされることになる隣のカップルが気の毒だ。楽しいお食事中に申し訳ありませんと目で訴えながら軽く謝ると、カップルは苦笑いして再び食事を始めた。

 どうして私が気を遣わないといけないんだ……。と、重たいため息がこぼれてしまう。

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