別れたはずの御曹司は、ママとベビーを一途に愛して離さない
「まずは構成から始めましょうか。こちらが過去に私が作らせていただいたケーキの一覧なんですが、リース型、三日月型、ブーケ型、波型……桜の花をどう配置させるかでだいぶ印象は変わるんです。なにかご希望の形はございますか?」
「そうですね……」
タブレットの作品を真剣に眺める彼は、やはり美しい。
「頭にあるのは風にヒラヒラと舞う淡く優しい桜なんですよね。なので、波型で風に揺れるイメージで構成をお願いしたいです」
「分かりました」
彼の頭の中にはすでにイメージがあるようで、それを細かくヒアリングしながら、スケッチしていく。
やり取りをしていくうちに、大切な人に贈るケーキだということを話してくれた。そう語る彼の表情は柔らかく深い愛情に溢れているようにも見えたが、それと同時に私にはその表情は切なげにも思えた。だけど、そこに触れることはしない。
お客様の口から語られないことは、むやみやたらにこちらから立ち入らないようにしている。
彼の大切な人が恋人なのか、家族なのか、友人のなのか。結局、その日最後まで彼がその相手を明らかにすることはなかった。
「そうですね……」
タブレットの作品を真剣に眺める彼は、やはり美しい。
「頭にあるのは風にヒラヒラと舞う淡く優しい桜なんですよね。なので、波型で風に揺れるイメージで構成をお願いしたいです」
「分かりました」
彼の頭の中にはすでにイメージがあるようで、それを細かくヒアリングしながら、スケッチしていく。
やり取りをしていくうちに、大切な人に贈るケーキだということを話してくれた。そう語る彼の表情は柔らかく深い愛情に溢れているようにも見えたが、それと同時に私にはその表情は切なげにも思えた。だけど、そこに触れることはしない。
お客様の口から語られないことは、むやみやたらにこちらから立ち入らないようにしている。
彼の大切な人が恋人なのか、家族なのか、友人のなのか。結局、その日最後まで彼がその相手を明らかにすることはなかった。