別れたはずの御曹司は、ママとベビーを一途に愛して離さない
「熱いからちゃんとふぅーして食べるんだぞ?」

「はーい」

渚さんに言われたようにハンバーグにふーっと息を吹きかけてから湊斗は一口頬張った。

「おいしい! もっともっと!」

嬉しそうな笑顔を浮かべる湊斗を見て、渚さんはご満悦だ。湊斗に言われるがままにハンバーグを再び切って、しまいには自ら持参した食品ハサミで付け合わせのナポリタンを手際よく切り分け始めた。

湊斗のお世話する姿ももうすっかり板についている。いや過保護すぎると言ったほうが正しいのかも。微笑ましい光景に思わず笑みが零れる。こんな日常が愛おしい。

そして、食事を堪能した私たちは渚さんの実家へと向かい出した。

「凛子、大丈夫か? 無理はしないでほしい。また後日でもいいん……」

急に口数が減った私に気付き、渚さんが心配そうに私の顔を覗いた。

「大丈夫です。せっかく時間を作ってくださったのだから、今日会いに行きます。湊斗の顔を見ていただきたいですし」

「そうか。ありがとう。僕もできるだけカバーするから。父もあの頃のようにとがってはいないから、大丈夫だ。もう少し肩の力を抜いてリラックスしてくれ」

片手で湊斗を抱っこしながら、渚さんが私の手を力強く握ってくれた。
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