別れたはずの御曹司は、ママとベビーを一途に愛して離さない
「ママー! じぃじ! 一緒にかくれんぼしようよ」

ちょうど話が済んだタイミングで湊斗が駆け寄ってきて、私たちの手を取って走り出す。視線の先には優しく微笑む渚さんがいる。

「僕が鬼をするからみんな隠れてね」

そして湊斗の独壇場で有無を言わせず、かくれんぼが始まった。

湊斗が覚えたての数字を数え始める。でもまだ五までしか分からなくて、一から五を何回も繰り返している姿を見て、クスッと笑ってしまう。

どのタイミングで捜しだすかは湊斗の気分次第らしい。木の影からこっそりと我が子の様子を窺っていると、目の前に影が落ちた。

「凛子……」

愛おしい人が私の名前を呼んで、ギュッと自分の方へと引き寄せた。

「ちょ、ちょっと渚さん! お父様に見られたら……」

小声でそう言って周りを見渡しながら離れようとするが、渚さんは身体を解放する気はないらしい。

「大丈夫だ。みせつけてやればいいじゃないか。凛子、こっちを向いてくれ」

「もう!」

頬を膨らませて渚さんの顔を見上げれば、真剣なまなざしが降ってきて優しく頬を撫でた。
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