別れたはずの御曹司は、ママとベビーを一途に愛して離さない
「やはり作り手としてはそういう部分が気になるものなのですね。あのパーティーの日も熱心に料理を見られていましたよね」

「え?」

あの日のことを振り返ると料理にがっついていた自分を思い出し、急に恥ずかしなり頬が熱くなっていく。

「そうですね。盛り付けや飾り付け、使われている食材など気になってしまいます。なにより私が食べることが好きっていうのが一番の理由ですけどね」

苦笑いを浮かべる私の前で渚さんが優しく微笑む。

「僕も食べることが好きなので気が合いそうだ」

「そうですかね?」

「ええ。単刀直入に聞きますが、凛子さん今お付き合いしている方はいますか?」

さらりとそんなことを聞いてきた渚さんを目の前に固まってしまった。

「……今はいません。仕事漬けで誰かとお付き合いする余裕がなくて。仕事が恋人みたいなものですね」

「ならば僕にもチャンスがあるということですかね」

渚さんが悪戯っぽく笑い私を見つめる。鈍感な私でも分かる。なぜか渚さんから猛アピールを受けている気がする。

私の考えすぎだろうか。渚さんのような眉目秀麗な男性が私みたいな女に興味を示すはずがない。

これはきっとリップサービスだ。心を渦巻く戸惑いを隠すように平静を装ってコース料理を食べ続けた。
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