別れたはずの御曹司は、ママとベビーを一途に愛して離さない
じりじりと太陽が頭上から照りつけ、熱風が頬を通り過ぎていく。

嵐のように私の前に現れ、強引に且つ鮮やかに私の心を奪っていった渚さん。彼とのお付き合いが始まって二か月が過ぎようとしていた。

「そういえば美紅、無事に引渡しが終わって新居に引っ越したそうです」

「それはよかった」

ふわりと笑い、渚さんが夕食を作る私の目を見つめる。今日はお互い仕事が休みで映画を観に行き、その後ドライブデートを楽しんだ。

夕飯をどうするか相談して渚さんが手料理を食べたいと言い出したので、材料を買って渚さんのマンションに帰宅して夕飯を作り出したところだ。

付き合ってから一度だけ手料理を振る舞ったことがあったが、そのときに作った肉じゃがを渚さんが気に入ってくれたようで、また食べたいとリクエストがあったのだ。

そんな風に言ってもらえると嬉しくて料理を作るモチベーションも上がる。

「美紅、渚さんにすごく感謝していましたよ」

「自分の仕事をしたまでだよ。むしろ僕の方が源さんに感謝しているよ」

「美紅に感謝ですか?」

「ああ。凛子との仲を取り持ってくれたのは源さんだからね」

優しく笑い、渚さんがギュッと後方から私を抱きしめた。
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