別れたはずの御曹司は、ママとベビーを一途に愛して離さない
「今日は本当にいろいろとすみませんでした」

「いいや。気にしなくていいよ。湊斗くん疲れて寝ちゃったみたい」

仕事を終え事務室に行くと、ソファーの上ですやすやと眠る湊斗がいた。

「ご迷惑をかけてしまってすみません」

「凛子ちゃん謝りすぎ。湊斗くんとってもかわいかったよ。一緒にお絵かきしたんだけど、ママの絵を描きながらいろいろ教えてくれたよ」

「いろいろ?」

「ママは水色が好きとか、ピーマンが食べられないとか、めちゃくちゃご飯をたくさん食べるとか、韓国のアイドルにハマってるみたいなことも言ってたかな」

「もう湊斗ってばおしゃべりなんだから」

恥ずかしすぎて頬が上気していく。それにしても湊斗は普段から実に私のことをよく見ている。これからは言動に気を付けなければと軽く心に誓ってみる。苦笑いを浮かべる私を見て、岬オーナーがクスリと笑った。

しばらくそんな話をしていたが、湊斗が起きる気配はない。

仕方ない。抱っこして家まで連れて行くしかないか。

タクシーを呼ぶほどの距離でもないが、もうじき三歳を迎える湊斗の体重はとうに九キロを超えている。しかも寝ている湊斗を抱っこするのは、けっこう大変だ。きっと明日は両腕筋肉痛に違いない。そう思いながら帰り支度を始めると、

「送ってくよ」

岬オーナーがそう言って席を立った。
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