別れたはずの御曹司は、ママとベビーを一途に愛して離さない
***

その日は雲ひとつない真っ青な空が広がっていた。時刻は十五時になろうとしていた。じきに私を指名してケーキを注文してくださったお客様との打ち合わせが始まる。

緊張気味に店と打ち合わせ室を行き来する私を見て岬オーナーがクスクスと笑う。

「凛子ちゃん、落ち着いて。大丈夫だよ。電話で話した感じだと落ちついた優しい雰囲気の方だったから。それに凛子ちゃんの作るケーキを気に入ってくださって、わざわざここまで足を運んでくださるんだから、凛子ちゃんもいつもどおりの笑顔と閃きで迎えてあげてほしい」

「そうですよね。最高のケーキを作り上げたいのでテンパらないでお客様の要望を細かくヒアリングしたいです」

岬オーナーに諭され、少し気持ちが落ちついた頃、そのお客様は店へとやってきた。

「十五時から打ち合わせの予約をいれていた如月(きさらぎ)です」

「如月様、お待ちしておりました。こちらへどうぞ」

店奥にある打ち合わせ室へとそのお客様を案内し、軽く自己紹介を終えて着席したころ、オーナーが淹れたての紅茶とマカロンを持ってきてくれて、それをお供に打ち合わせが始まった。
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