御曹司とのかりそめ婚約事情~一夜を共にしたら、溺愛が加速しました~
喫煙所は屋外テラスになっていて、洋司さんはガラスの塀に凭れながら煙草をふかしていた。

そう、有栖川家の当主で蓮さんのお父様にあの書類を匿名で送ったのは、紛れもなくこの人だ。

「よっ!」

喫煙所には彼以外誰もいないみたいで、込み入った話をするには都合がいい。向こう側に蓮さんの住んでいるマンションが見えて、じわりと切なさがこみあげてきた。

「ここのホテルって景色いいよな、春海もこっちに来いよ」

すでに酔っぱらっているのか洋司さんの顔がほんのり赤い。こっちは真面目な話をしに来たというのに……。

「ピアスをいっぱいつけた髪が長くて化粧の濃い女の人とさっき会ったんですけど、先に帰るって言ってましたよ」

「あー玲子か、ったくこれから盛り上がるってのに。んで、春海は何しにここに来たんだ? 俺に会いたくなった?」

この期に及んでまだそんな馬鹿なことを言っていることに呆れ返る。

「いいえ、洋司さんに確認したいことがあるんです」

ヘラヘラしている彼に笑顔になる必要はない。私は唇をキュッと結んで真剣な顔を向けた。
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