御曹司とのかりそめ婚約事情~一夜を共にしたら、溺愛が加速しました~
それを捉えた焦点を一寸も動かさないようにする。ネックレスのことで頭がいっぱいになっていた私はまったくまわりが見えていなくて、遠くから車が来ていることにも気づかずにそのまま道路に飛び出していた。そのとき。

「春海!!」

それは一瞬のデジャヴだった。

聞き覚えのある声で誰かが私の名前を叫んだ。

前にも似たようなことがあったような?

けたたましい車のクラクションが耳をつんざくと、目の前が眩んで真っ白になった。

え……?

「春海!」

「きゃっ!」

後ろから腕を取られ、強引な力で引き戻される感覚になにがなんだかわからず、猛スピードで目の前を車が走り去って行く姿を見て全身が凍りついた。

私、今……車に轢かれそうになったんだ。

「まったく! 君は何をしているんだ!」

はぁ、と深いため息とともにふわりと抱きしめられる。

「やっと見つけた……」

鼻を掠める香り、温かくて一番落ち着ける体温、私を抱きしめていたのは……。
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