御曹司とのかりそめ婚約事情~一夜を共にしたら、溺愛が加速しました~
「……なるほどな。だから君はこんなところで一人でネックレスを探していたというわけか」

「……はい。でも、全然見つからなくて……せっかくプレゼントしてもらったのに」

アスファルトの上でキラリと光ったものも、冷静になってよく見てみるとただのゴミだった。一瞬、見つけたかと思った胸の高鳴りも一気に沈んでいく。

「君と電話をしたとき、なんとなく違和感があった。婚約を破棄して欲しいというのも、誰かに言わされているような気がしてならなかった。あのとき、君の目の前にいたのは緒方だな?」

「……そうです」

腕を組み、蓮さんは複雑な表情を浮かべ眉間に皺を寄せる。そしてもう一度ため息をつくと首を振って静かに口を開いた。

「まず、最初に大きな誤解を解かないとな。俺にそんな婚約者はいない」

「え?」

「俺が愛している女性は君だけだ。ずっと」

婚約者はいない? じゃあ、緒方さんが言っていたのは……嘘だったの?

聞き間違いじゃないかと何度も目を瞬かせる。そんな私に蓮さんは私の一番好きな優しい笑顔を向けてくれた。

「昨日、電話を切った後、すぐに君のアパートまで車をすっ飛ばしたが、すでに部屋はもぬけの殻で……たぶん、人生であんなに愕然としたのは初めてだ。君を失ったかと……もうあんな思いはしたくない」

蓮さんが切なげに顔を歪めると、私まで堪えていたものが溢れそうになる。
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