御曹司とのかりそめ婚約事情~一夜を共にしたら、溺愛が加速しました~
蓮さんのお母様ってどんな人なんだろう。きっと美人で聡明で優しくて……蓮さんにそっくりな人なんじゃないかな。

蓮さんがそっと私の頭に手を添えてやんわりと撫で下ろす。

「俺が啖呵を切るくらいの大事な女性なら、なおさら有栖川家に嫁いで君に嫌な思いをさせたくないという、親父なりの考えがあったみたいだ。有栖川家にはクセの強い分家がわんさかいるからな。色々すまなかった。けど、君との結婚のことは親父も了承済みだ」

「えっ……ほ、ほんと、ですか?」

「この状況で嘘なんかつくか?」

蓮さんに笑顔を向けられると、いつまでも胸の中で渦巻いていたモヤモヤがスッと晴れ渡っていくような気がした。

「どんな女性か会ってみたいから今度連れて来いってうるさくせっつかれた。きっと親父も君のことを気に入ってくれるはずだ。なんせ、俺が世界中で一番愛した人だ。たとえ俺の目の前からいなくなろうと、必ず君を探し出してみせる。俺も大概諦めの悪いしつこい男だからな」

ほんの少し照れくさそうな蓮さんの頬がほんのり赤く染まるのを見て、なんだか私までは恥ずかしくなってきた。ふたりで顔を見合わせると、自然と笑顔を交わし合う。

もう二度とこんなふうに笑い合うことはできないだろうと思っていた。

「蓮さん……もしかして私のことずっと探してくれてたんですか?」

「当たり前だろ。今日だって、正直一日仕事にならなかったくらいだ。君のことで頭がいっぱいで……馬鹿みたいに必死だった」

私も蓮さんのことで頭がいっぱいだ。彼も同じだったと聞いて嬉しくてたまらない。

互いの体温を感じ、私の腰に回された腕に力が入る。それを合図に唇を寄せ合おうとしたそのときだった。
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