御曹司とのかりそめ婚約事情~一夜を共にしたら、溺愛が加速しました~
困ったな、会社のものだから勝手に撮った写真を外部の人に見せるわけにもいかないし……。

「あの、写真は撮りましたけど、あなたのことを撮っていたわけじゃ――」

モデルみたいな体型で美人なのはわかるけど……芸能人かなにか? もしかしてスクープされたって誤解してるのかな? 

「だから、撮ったんじゃないならその証拠を見せてって言ってるのよ。場合によっては警察に突き出すわよ」

腕を組んでイライラを募らせている彼女に、私はどうすることもできなくて黙り込んでしまった。

どうしよう。笑って誤魔化せそうな雰囲気でもなさそうだし……。

そのとき。

「どうされました?」

突然聞こえてきた第三者の声にハッと顔を上げると、パリッと紺色のスーツを着こなした紳士的な男性が歩み寄ってきた。

わっ、すごい美形……。

少しクセのある柔らかな黒髪で、顔の中心に一本線を引いたようにスッと通った鼻筋。その両脇に切れ長の瞳が完璧に左右対称を保って並んでいる。男性に対しておかしな表現だけど、ひと言でいえば綺麗な顔立ちをした人だった。彼も参加者のひとりだろうか。

「えっと、先ほど少し会場内の写真を撮らせてもらったんですけど……こちらの方が、自分が写っているのではないかと言って――」

チラッと横目で窺うと、彼女は今まで鬼のような形相をしていた表情をパッと笑顔に変えた。

「そ、そんなことないのよ、全然気にしてないから! 私の勘違いだったみたい。ごめんなさいねっ」

今まで高圧的なオーラをガンガン出して「警察に突き出す」なんて脅迫まがいのことまで言っていたくせに、なぜかそのスーツのイケメンが現れたら彼女は顔色を変えてそそくさとどこかへ行ってしまった。

「君、大丈夫か?」
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