御曹司とのかりそめ婚約事情~一夜を共にしたら、溺愛が加速しました~
「連れて行きたい店って、ここのイタリアンレストランのことだったんですか?」

「いや、違うよ」

美味しいピザの店がある。とまずは蓮さんお勧めのイタリアンの店に入ってディナータイムを楽しんだ。

建物を覆う巨大なガラス窓、広大な開放型アトリウムになんといっても中央に備え付けられた噴水を眺めつつの食事は絶品だった。だけど、蓮さんが連れて行きたい店はどうやらここではないらしい。

「ようやく仕立て屋の都合がついて、有栖川お抱えのブティックがここの三階にあるんだが、先日ドレスを弁償するって言っただろ?」

え、有栖川お抱えって……そんな、仕立て屋さんまで?

弁償といっても安物のドレスとは割に合わない気が……。

レストランを後にして三階までやって来ると、なにやら一風雰囲気の違う高貴な感じのする“Pont Neuf”という店に着いた。

ポン、ヌフ……ポンヌフって! この店って確か……。

ハイエンドブランドといえばこの店の名前は必ず出てくる。女性なら一度は身につけたい憧れのブランドだ。

「あ、あの! ドレスの弁償だなんていいですからっ! こんな高いお店のドレス、私には――」

「いいから、気にしないでくれ。値段よりも君に似合うドレスを見つけることが大事なんだから」

気後れする私の手を引いて、有栖川専属の仕立て屋だという女性従業員を紹介される。

四十半ばくらいの小綺麗な感じの人で、好きな色や好きな装飾パーツ、ドレスの型などあれこれ尋ねられた。
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