御曹司とのかりそめ婚約事情~一夜を共にしたら、溺愛が加速しました~
ドレスの弁償って言ったって、なんだか返ってとんでもないことをしてしまたんじゃ……。


「あの、ドレス……なんだかすみませんでした」

「気にするな。君はドレスが届くのを楽しみにしていればいい」

店を出てしばらくすると、蓮さんのスマホに電話がかかってきた。

「すまなない、仕事の電話みたいだ」

「いえ、気にしないで出てください。ここで待ってますから」

人通りの邪魔にならないように通路の端っこに身を寄せて、スマホを片手に距離を置く蓮さんの背中を見つめる。

なんだかデートしてるみたい……やっぱり、これってデートっていうのかな?

蓮さんと一緒にいると楽しい。ずっと話していたいし、このまま帰りたくないとまで思ってしまう。自分でも気持ちが彼に傾いているのが分かる。だけど、また元カレみたいな目には遭いたくない。

蓮さんはそんな浮気するような人じゃないよね?

優しくて誠実だし……。

「春海? 春海じゃないか、なんだ、こんなとこで何してるの?」

え?

不意に名前を呼ばれ、その声の方を向くとギョッと目を見張った。硬直したまま棒立ちになっている私に笑いかけてきたのは……。
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