御曹司とのかりそめ婚約事情～一夜を共にしたら、溺愛が加速しました～

以前の私だったら、洋司さんがそんなこと言うはずない！なんて思ったかもしれないけれど、今なら洋司さんが裏でそんなことを言っていたとしても不思議じゃない。

「もう私に関わらないでください。チョロくて悪かったですね。だったらそのボインちゃんと一緒にいればいいじゃないですか」

「……は？　何その言い草、春海ってそんな女だったわけ？」

「浮気するような人に愛想振りまく必要なんてありませんから」

今まで洋司さんの前では大人しい良い女でいたつもりだったけれど、彼はそれを都合よく利用した。だからもうこの際だから色々はっきり言ってやる。そう思って口を開きかけたときだった。

「すまない、待たせたな」

電話を終えた蓮さんがタイミング悪く戻ってきてしまった。

あぁ～やだやだやだ！　洋司さん、お願いだからもうあっち行って！

洋司さんよりも少し背の高い蓮さんがチラッと彼を見下ろす。すると、今まで飄々としていた洋司さんの顔色がサッと変わった。

「おいおい、春海、なんで有栖川部長と一緒にいるんだよ？　あ、いつも父がお世話になっております～」

洋司さんは蓮さんのご機嫌を窺うようにヘラヘラ笑ってペコリとする。彼がこんなに頭を下げているのを初めて見た。

さっきまでの偉そうな態度はなんだったの……？