御曹司とのかりそめ婚約事情~一夜を共にしたら、溺愛が加速しました~
涙で顔がぐちゃぐちゃになったまま、蓮さんに連れてこられたのは洋司さんの住んでいるマンションよりもさらにグレードの高い高級マンションの最上階の一室だった。

「あ、あの……ここは?」

「二人だけになりたかったから俺のマンションに連れてきたんだが……落ち着いたか?」

蓮さんの前であんなふうに言われて悔しくて、悲しくて、なにより彼のことを利用した自分が嫌になった。色々な感情が入り乱れたらみっともなく泣いてしまった。

「はい。すみません、もう大丈夫です」

蓮さんの住むマンションは地上五十階建てのタワーマンションで、洋司さんの住んでいるマンションと中庭を挟んで隣接している。

白を基調とした壁とフローリングで、リビングには大型液晶テレビと座り心地の良さそうなソファー、その前にガラスの天板がついたローテーブルが置いてある。壁際には本棚が並び、ザッと見た感じ経済や経営関連のものばかりで中には外国語で書かれた本もあった。リビングの奥に部屋が二つあるけれど、おそらく寝室と書斎だろう。

物が少ないということもあるけれど、あまり生活感の感じられない部屋だった。

「私、蓮さんに謝らなきゃいけないことが――」
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