御曹司とのかりそめ婚約事情~一夜を共にしたら、溺愛が加速しました~
えーっと、これはいらないから全部捨てちゃおう。で、これもまとめて……っと。

あぁ、もうこんな時間だ。

時刻は十七時。

元々部屋にある荷物は少なかったのが幸いして、片付けもスムーズにいった。夜にはあらかた引越しの準備が整い、後は一階に住む大家さんに挨拶をするだけだ。ほんのり額にかいた小汗を拭ったそのとき、部屋のインターホンが鳴る。

誰だろ? 滅多にうちに来る人なんていないのに。

どうせ新聞の勧誘か何かの営業だろうと思い、居留守を使おうとしたけれど、やっぱり気になってドアを開けた。すると。

「こんばんは、高杉様。突然不躾な来訪をお許しくださいませ」

目の前に立っていた意外な人物に私は目を丸くしたまま棒立ちになった。

「お、緒方さん?」

どうしてこの人がうちに? 今日は休みって言ってなかったっけ?

「あ、あの玄関先じゃなんですから、中へどうぞ」

「では、失礼いたします。あまり外で話せるような内容ではありませんので……」

外で話せる内容じゃない。そう言われてなんだか胸がざわついた。嫌な予感がする。

緒方さんはいつも通り礼儀正しく、部屋に入る前に一礼をしてから靴を脱ぐ。
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