極上御曹司はかりそめ妻を縛りたい~契約を破ったら即離婚~
古渡さんの様子からして、なにかあってはいけない人が住んでいるのだけはわかった。
間違って入ってしまえるような場所ではなさそうだが、それでも気をつけておこう。

「ん、じゃあ俺は行ってくる。
なにかあったら遠慮なく連絡しろ」

「わかりました」

盛実さんの差しだすジャケットに、彼が袖を通す。

「俺がいないからって淋しがるなよ」

傍で腰を屈めた彼の手が、私の顔に触れる。
なにを、とか思っている間に顔が近づいてきた。

「それは契約違反です」

「……行ってきますのキスは、ただの挨拶だろ」

唇が私の手のひらに遮られ、彼が目を開ける。
眼鏡の奥から子供みたいにジト目で睨まれたって、契約違反は契約違反だ。

「してもいいですけど、速攻契約破棄で離婚ですが?」

「……それは困る」

怒ってさらに迫ってくるのかと思ったけれど、彼はニヤリと愉しそうに唇の端を僅かに上げ、私から離れた。

< 40 / 178 >

この作品をシェア

pagetop