大正蜜恋政略結婚【元号旦那様シリーズ大正編】
花嫁衣裳を整えるお金など、今の三谷家にはない。
父は恐縮して再び頭を下げた。



父との話が済んだ私たちは二階に上がり、泰子と貫一と久しぶりに触れ合った。

敏正さんはふたりとすぐに打ち解け、特に貫一はなついて「帰らないで」とせがむほどだった。


「貫一、わがままはだめですよ。津田さま。本当に素敵なお姉さまなんです。どうか、よろしくお願いします」

「泰子……」


たった二十日しか離れていないのに、泰子が随分しっかりしたのに気づいて目頭が熱くなる。

彼女も私と同じように、貫一を守ろうと必死なのかもしれない。


「もちろんだよ。泰子さん、これから私の会社の者がよく出入りさせてもらうと思う。困ったことがあれば遠慮なく伝えて。泰子さんは泰子さんの人生を楽しんでほしいんだ。学費の工面はするから、できれば高等女学校にも行ってほしい。これからは女性も学が必要な時代が必ず来るからね」


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